【方針】

近年、インターネットや携帯電話を始めとして、様々なデジタル通信網が普及した。それに伴って、光ファイバー網のような広帯域ネットワークへの要求だ けでなく、更に身近の小さい機器に通信機能を埋め込み、人間生活をきめ細かくサポートするユビキタスネットワーキングの重要性が高まっている。 そこで、本研究所は、我々の身の周りにある、あらゆるものにマイクロコンピュー タと通信機能を組み込み、それらが互いに情報を交換しながら協調動作し、人 間生活をより高度にサポートする、ユビキタスコンピューティング環境を構築 するための、次世代通信の基盤プロトコルおよびそのシステムの確立すること を目的としている。そのために、以下の特質をもったコンピュータネットワークプロトコル、およびシステムの構築を目指している。

1. リアルタイム通信プロトコル
2. セキュリティー
3. 超小型コンピュータ
4. エフォートレスオペレーション
5. ユーザとの高い親和性
6. 省リソース
7. 高度な協調・調停動作による人間生活の支援機能の実現

【概要】

リアルタイム通信プロトコル/Realtime communication protocols
ユビキタスコンピューティング環境を実現するための基本プロトコルには、人間の振る舞いや生活・社会を構成するあらゆる事象に追従して応答できるた めの、(ソフト)リアルタイム性が必要である。特に、身の回りのインテリジェントな機器(アクチュエーター)を制御する部分には、より強いリアルタイム 性が要求される。

セキュリティー/Security
ユビキタスコンピューティング環境による夢、例えば、未来の道路交通システムのイメージとして、自動車のナビゲーションシステムから、到着時刻に合わ せて自宅の風呂の湯を沸かすといったシナリオが描かれてきた。実際に、このシナリオを実現するためには、悪意ある他者が自宅の風呂を操作することを防 げなければならない。
更に、サイバーアタックやクラッキング、サイバーテロを想定した対策も求められている。ユビキタスコンピューティング環境を、ネットワーク経由のアタッ クから守るためには、セキュアな通信プロトコル、セキュアな通信システムの開発が不可欠である。ネットワーク基盤の遍在化(ユビキタス化)が急速に進 んでいる現在、セキュリティーを向上させる技術開発は急務である。

《研究事例》 組込向リアルタイムPKI

超小型コンピュータ/Ultra Tiny Computers
ユビキタスコンピューティング環境では、非常に膨大な数の小さな機器にコン ピュータや通信機能が埋め込まれる。従って、各ノードが小さくコンパクトで あること重要である。計算機能や通信機能の偏在性(ユビキタス性)を高める ためには、各ノードがコンパクト化できることが不可欠である。

《研究事例》 超小型チップを用いた携帯端末による情報提供

エフォートレス/Effortless Operation
ユビキタスコンピューティングのためのネットワークプロトコルを実現する上で重要なことは、コンピュータに詳しくない一般利用者でさえも、自身が所有 する機器の安全性、蓄積情報や通信の秘匿性等を手軽に確保できることである。現在でも多くのセキュアプロトコルがあるが、そのほとんどが、認証や暗号の ための鍵の管理や認証局(CA局)からの証明書の取得といった、専門知識を要する運用作業を伴うため、普通の人が手軽に使えるものになっていない。そこ で、本研究課題では、耐タンパ性を有するハードウェアを利用することによって、より手軽で簡便なセキュア通信プロトコルを開発する。このプロトコルに よって、簡単に使えるパッケージ化された強固で安定した汎用セキュリティー基盤が実現され、コンピュータに詳しくない普通の人でも、セキュアな通信基 盤の恩恵に浴することができる。

ユーザとの親和性/Human Friendly Interface
ユビキタスコンピューティングは、人間の身の回りに計算機能や通信機能を埋 め込むことで、人間生活をサポートする。そこで、重要な観点の一つは、どの ように人間をサポートしていくかということである。ユビキタスコンピューティ ング環境においてこうした人間との境界部分、つまりヒューマンインタフェー スは、「強化現実環境」(Augmented Reality)や「複合現実環境」(Mixed Reality)、またより一般的には、「コンテクストアウェアネス」(Context Awareness)といった技術が重要である。本研究でも人間にとって、より自然 でかつ利便性の高いサポート手法の研究開発と、そのような利便性の高い環境 の実現を進める。

《研究事例》 マルチモーダルな手法による位置検出
《研究事例》 ユビキタス情報空間
《研究事例》 超小型チップを用いた携帯端末による情報提供
《研究事例》 国際ユビキタスシティTOKYOプロジェクト

省リソース/Calm Computing
ユビキタスコンピューティング環境では、ノード数が従来の分散環境やインター ネット環境にもまして膨大な数になることから、一つのノードが使う電力量な ど、消費する各種リソースが小さくなるようなCalm Computing技術を確立する。従来の情報通信技術は、性能や利便性を最大化するための研究開発に重きがお かれており、省資源を最大化するといった基準に則った研究開発は比重が低かった。本研究課題で実現するプロトコルやシステムでは、こうした省電力・省資 源を実現する。

超分散環境における協調処理/Cooperative Processing in Ubiquitous Computing Environments
ユビキタスコンピューティング環境では、単に多くのノードがあるだけでなく、それらが「協調」「調停」動作をすることで、人間生活を高度に支援する。 例えば、部屋の温度が上ったら、窓を自動的に開け、もしも部屋の中でピアノをひきはじめ騒音が発生したら、窓を自動的に閉めて空調を入れるといった動 作である。こうした協調・調停作業が、あちこちに埋め込まれた膨大な数のコンピュータの間で実施できなければならない。そのための通信システム、交換 情報形式、超機能分散型ソフトウェアのためのプログラミングシステムなどの研究開発を行う。

研究開発プラットフォームの構築/Platform Systems for Ubiquitous Computing Research
こうしたユビキタスコンピューティング、ユビキタスネットワーキング環境の研究開発を行うためには、ハードウェア、カーネル、ミドルウェア、各種アプ リケーションソフトウェアの全てにおいて、自らで改造、改変を加えることができるシステムが不可欠である。そこで、本研究所では、ユビキタスコンピュー ティング環境のためのプラットフォームシステムの開発を行っている。現在のITは、最先端の研究と商用システムの間は極めて曖昧であり、また別の言い方 をすれば、最先端の技術であっても非常に短い開発期間で市場に投入される状況にある。そこで、本研究所は、単に研究所内だけで利用する実験システムで はなく、商用として十分な価値のあるプラットフォームを構築している。

《研究事例》 ユビキタス研究開発プラットフォーム

【研究論文他】

平成15年度
平成14年度